特殊鋼の知識
磁性材料(2)
前回につづき軟磁性材料についてお話しします。
軟質と硬質磁性材料の区分は一般に、Hc(保磁力)の大きさで分けられており、境界は明確ではありませんが、おおよそ 800A/m以下を軟磁性材料と呼んでいます。
当然中間の特性をもつ材料が存在するわけで、Hc800~1600A/mのものが、半硬質磁性材料と呼ばれています。
特性は外部からの磁化力により一度着磁した磁極(N,S極)を容易に反転できる性質を持ってます。
軟磁性材料の必要特性はつぎのようになります。

① 飽和磁束密度Bsが高いこと
② 初透磁率μiが大きいこと
③ 最大透磁率μmが大きいこと
④ 保磁力Hcが低いこと
⑤ 損失Whが小さいこと

軟磁性材料を成分からみた分類
 
鉄系
電磁軟鉄 高純度ほど立ちあがりが早く高磁束密度が得られます。(JIS SUYB、SUYP)
けい素鉄 鉄に1~3%Siを添加体積抵抗を大きくし低鉄損をはかったもので、発電機、モータ鉄心に使用されます。最近は3%Si鋼板にSiを浸透処理した6.5Si材が開発され高周波用で注目されています。
鉄-コバルト合金 Fe49Co-2Vのパーメンジュールは2.3テスラの高磁束密度材で、電子顕微鏡ポールピース、高インパクト機構のプリンターヘッドに、また冷間圧延で0.1~0.2mm厚みが可能となったため高トルク発電機用積層型鉄心に検討されています。
Fe-Si-Al合金 9.5Si-5.5Alのセンダストは高透磁率と低保磁力と共に耐磨耗性が高いため駅改札用や紙幣読み取りの磁気ヘッドに使用されています。
ニッケル-鉄系
Ni40~50%のパーマロイは飽和磁束密度が高く、AV磁気ヘッド用に、Ni70~80%は磁束密度が低いが、初透磁率が高いため小型トランス、計器、磁気シールドに使われます。
45Ni-FeはJISではPBパーマロイ、80Ni-4Mo-Feおよび78Ni-4Mo-3.5Cu-Feは、JIS PCパーマロイに規格化されてます。
また耐磨耗性が必要な磁気ヘッドコアにはNbを添加したハードパーム(79Ni-9Nb-Fe)が使用されます。